AI勉強会 第1回◎ 日本IBM 茂木映典様 講演「IBM Bobとは」 ~IBM BobはIBM i開発をどう変えるのか、「開発パートナー」として進化するAI

iBIアライアンス「AI勉強会」第1回では、日本IBM テクノロジー事業本部 Power & Cloud事業部の茂木映典様より、「IBM Bobとは」と題して、IBM Bobの概要と最新機能、IBM i開発における活用の可能性について紹介いただきました。

生成AIを活用した開発支援ツールはすでに数多く登場しています。その中でIBM Bobはどのような位置づけにあり、IBM iの開発現場をどう変えていくのでしょうか。講演では、2026年6月にアップデートされたIBM Bob 2.0の新機能や、IBM i向けの拡張機能を交えながら、その特徴と今後の可能性が紹介されました。

IBM Bobは開発者の「パートナー」

IBM Bobは、アプリケーション開発やプログラム開発を支援するAIベースの開発ツールです。

単にコードを生成するだけではありません。ソースリポジトリーや仕様書を理解し、要件確認から設計、仕様書生成、コード生成・修正、コードレビュー、最適化、テスト、本番化まで、開発工程全体を支援する「開発者のパートナー」として位置づけられています。IDEはVS Codeをフォークして作られており、VS Codeを利用している開発者にとって馴染みやすいインターフェースとなっています。

IBM Bobの大きな特徴の1つが、IBM製品に対応した拡張機能です。IBM iについても専用の拡張機能が提供され、RPG、COBOLをはじめ、CL、SQL、DDSといったIBM iで利用されている言語に対応しています。

Bob 2.0では「Ask」「Plan」「Agent」を使い分ける

2026年6月24日出荷分から、IBM Bobは2.0へアップデートされました。

IBM Bobの概要

Bob 2.0ではさまざまな機能強化が行われていますが、実際に利用するうえで重要になるのが、Ask、Plan、Agentという3つのモードです。

「Ask」は、質問・調査・理解を目的とするモードです。既存コードを解析して処理内容を説明させたり、エラーの原因を調べたりするときに利用します。基本的には読み取りを中心とし、ファイルへの書き込みやコンパイルなどは行いません。

「Plan」は、設計・計画・仕様策定を支援するモードです。設計書や仕様書の作成、システム構成の検討、開発タスクの整理など、「何を、どのように作るか」を固める工程で活用できます。

そして「Agent」は、実際のコード生成・修正・実行までを担うモードです。ファイルの読み書きやコード生成に加え、IBM i向けの機能を利用すれば、RPGやCL、DDSのコンパイルなども行えます。

さらに、ユーザーがすべてを手動で切り替えるだけでなく、処理内容に応じてBob自身が必要なモードへ切り替えながら作業を進めることもできます。つまり、Askで調べ、Planで考え、Agentで実行する。開発の工程に合わせてAIの役割を切り替えながら利用できることが、Bob 2.0の特徴です。

Bob 2.0の3つのモード

「理解」から「テスト」「モダナイズ」までAIが支援

では、IBM iの開発現場ではIBM Bobをどのように利用できるのでしょうか。講演では、IBM iのアプリケーションライフサイクルに沿って、Bobが支援できる領域が紹介されました。

まずは、既存のRPGやCOBOLアプリケーションの全体像をUnderstand(理解)すること。そして、個々のソースコードを自然言語でExplain(説明)し、ドキュメントを生成することができます。

さらに、RPG/COBOLのコードをGenerate(生成)し、テストケースやテストデータ作成用SQL、テスト設計書などを作成。既存のプログラムをより新しい形へRefactor & Transform(再構成・変換)することも支援します。

たとえば、古い固定フォームのRPGをフリーフォームのRPGへ変換したり、既存プログラムの共通サブルーチンを切り出してモジュール化したりといった活用も可能です。これまで人が個別に行っていた「理解する」「説明する」「作る」「テストする」「変換する」という作業を、一連の開発ライフサイクルの中でAIが支援する世界が現実になりつつあります。

AIが支援するIBM i アプリケーションライフサイクル

「人が開発する」から「Bobと開発する」へ

講演の中でも特に印象的だったのが、IBM Bobによってプログラム改修の進め方そのものが変わっていくという話です。

これまでのプログラム改修では、開発者が仕様書を探し、影響範囲を確認し、設計書を作成してソースコードを修正。さらに単体テスト仕様書を作ってテストし、本番化の手順を用意するといった一連の作業を行ってきました。IBM Bobと開発する場合、この中の多くの作業をBobに任せられるようになります。

影響範囲の調査、設計書作成、ソース改修、単体テストプログラムの作成・実行、本番化手順書作成、コンパイル、ソース管理――。では、人間の開発者は何をするのでしょうか。茂木様が示したのは、Bobが行った作業を「確認」「承認」し、必要に応じて「追記・修正を指示する」という役割です。

AIにすべてを任せるという意味ではありません。開発者はBobの作業を確認し、正しい方向へ導いていく。IBM Bobの登場によって、開発者は自らすべての作業を行う役割から、AIという開発パートナーを管理し、判断し、導く役割へと変わっていく可能性があるというわけです。

プログラム改修はどのように変わるのか

IBM iと直接つながる「Premium Package for i」

さらにIBM iに特化した機能として、2026年6月24日から「IBM Bob Premium Package for i」が利用可能になりました。

Premium Package for iを組み合わせることで、IBM BobからIBM iへ直接接続し、IBM i上にあるソースコードやオブジェクトなどへアクセスできるようになります。これにより、Bobがソースを生成し、IBM i上でコンパイルし、テストプログラムを作成・実行するところまで、一連の作業を進めることが可能になります。

途中でコンパイルエラーが発生した場合にも、Bobがコンパイル結果を確認し、コードを修正して再びコンパイルするといった処理まで行えるケースがあります。バッチプログラムなどであれば、開発者が5250画面を操作することなく、ソース生成からオブジェクト作成まで進められる――。講演では、そうした新しいIBM i開発の姿も紹介されました。

Premium Package for iには、IBM i開発のノウハウを取り込んだ「ワークフロー」や「スキル」も用意されています。

たとえば固定フォームRPGからフリーフォームRPGへの変換のような定型的な作業については、ワークフローとして一連の処理を実行できます。またBob自身が状況に応じて必要なスキルを判断し、IBM i上のソースコードへのアクセスやコンパイルなどを実行します。

さらに、IBMのマニュアルやRedbooksなどの公式ドキュメントを参照する仕組みを利用することで、IBM iに関する知識を活用した支援も行います。

IBM i開発はどこへ向かうのか

IBM Bobは、複雑なRPGやCLを理解・説明し、コードを生成・変更し、テストを支援し、既存資産のモダナイズまでをサポートする開発パートナーへと進化しています。

さらにPremium Package for iによってIBM iと直接つながることで、読み書き、テスト、コンパイルといった実際の開発工程まで、Bobを中心につなげられるようになってきました。

今後は、デプロイや監視、CI/CDを含むDevOpsとの統合や、プログラム変更時などの影響分析といった領域への機能拡張も計画されています。

IBM i 開発におけるAIの進化

今回の講演から見えてきたのは、AIによる開発支援が単なる「コード生成」から、その先へ進み始めていることです。仕様を理解し、設計し、コードを書き、テストし、必要に応じて修正する。そうした開発ライフサイクル全体にAIが関わるようになれば、IBM i開発者の仕事そのものも変わっていくことになります。

そして開発者には、そのパートナーに適切な指示を出し、結果を確認・判断しながら、正しい方向へ導いていく役割が、これまで以上に求められるようになりそうです。